採寸方法
型紙の設計に要る寸法。体型を測って得る採寸寸法と、流行や好みで決める意匠寸法を、上着・ズボン・チョッキそれぞれについて。
型紙の設計に要る寸法は、大きく2つに分かれる。
| 何で決まるか | |
|---|---|
| 採寸寸法 | 体型を測って得る |
| 意匠寸法 | 流行や好み、体格に対するバランスで決める |
意匠寸法は採寸で得られるものではないが、設計には要るので、ここでまとめて扱う。
上着
何を着た状態で測るか
その上着を着るときに着込むものを、すべて着けた状態の上から測る。三つ揃いで着るなら、ワイシャツ・チョッキ・ズボンを着けた上から測る。オーバーコートは、ジャケットを着た上から測る。
胸度式と短寸式
上着の採寸には大きく2つの方式がある。ほかに長寸式などもある。
| 方式 | 考え方 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 胸度式 | 胸囲をもとに、肩まわりの寸法を比例で算出する | 採寸が容易。比例で決まるため各部の釣り合いが崩れず、致命的な失敗が起きにくい | 仮縫いでの補正の影響が大きい |
| 短寸式 | 胸囲のほかに肩まわりを何箇所か測り、その値から作図する | 最初から姿勢に合った肩まわりの型紙が作れる | 採寸が難しく、誤差がそのまま各部の釣り合いの崩れにつながる |
胸度式は、猫背でも反身でもない姿勢を前提に、おおよそ合う型紙を作る。実際の姿勢へは、仮縫いで各部を補正して合わせる。
測る寸法
一周寸法はいずれも、床と平行に水平に測る。「測らない場合」の欄があるものは、採寸を省いてその値で代えられる。
| 寸法 | 測り方 | 測らない場合 |
|---|---|---|
| 胸囲(ブレスト) | 脇下の高さで胸まわりを一周 | ー |
| 腹囲(ウエスト) | 腰の一番細いところを一周 | ー |
| 臀囲(ヒップ) | 臀部の一番太いところを一周 | ー |
| 胸巾 | 左右の袖付のあいだ | 背巾と同寸としてよい |
| 背巾 | 左右の袖付のあいだ | 基度の1/4 + 基度の1/6 + 1.3cm を2倍する |
| 背丈 | 背中心線で、首の付け根からウエストの水平線まで | 総丈の57%、または身長の1/4 |
| 総丈(背広丈) | 首の付け根から臀部の下端まで | ー |
| 袖丈 | 前脇の袖縫い目の止まりから袖先まで | ー |
| 袖口幅 | 意匠寸法。14〜16cm程度 | 基度からの比例で決まる製図がある |
胸囲は最も重要な寸法である。半分にした値を基度(正度)と呼び、全体の基準寸法として使う製図法があるためである。ここを誤ると、比例で決まる各部がまとめてずれ、全体がきつく、あるいはゆるく仕上がる。
背丈は、測るより総丈に対する割合で決めたほうが、上着の見た目のバランスが崩れないことがある。
なお肩幅は、古い製図では設計寸法として直接現れることは稀である。
短寸式で加えて測るもの
次の4つを測る。
| 寸法 | 別称 |
|---|---|
| 鎌深 | ー |
| 前腋 | ブレイド |
| 前肩 | ストラップ |
| 越肩 | オーバーショルダー |
これらを測ると、反身と屈伸(猫背)、いかり肩となで肩、腕の付け根の太さ、鎌深を、あらかじめ製図に織り込める。うまくいけば仮縫いでの補正が少なくて済む。
採寸には(鳩型)採寸器があると便利である(伊東富 1934, pp.11-13)。
丈の決め方
背広の丈は、ヒップが隠れる長さが一般的な基準とされる。身長からもある程度は見積もれるが、流行と好みで多少変わる。
資料によって比例の標準が異なる。
| 資料 | 背広丈(サック丈) | モーニング丈 | オーバーコート丈 |
|---|---|---|---|
| 図解紳士服全書 | 身長の1/2 − 4インチ | 身長の1/2 + 6インチ | 身長の1/2 + 12インチ |
| 裁断研究 | 身長の1/2 − 4インチ | 身長の1/2 + 3インチ | 身長の1/2 + 8インチ |
| 裁断基礎研究 | 身長の42〜45% | 身長の60〜65%、または背広丈の150% |
モーニングの丈は膝の後ろまでとする。
オーバーコートの丈は流行によって大きく変わるが、膝丈から膝下丈を標準とみてよい(春向けのトップコートなどは別)。礼服の上に着ることを想定して、モーニング丈 + 3〜4インチ(10cm)以上という決め方もある(木村慶市, 松原正巳 1948)。
このほか、首付根の後ろの高さから床までを基準に割り出す方法もある。標準寸法の表は TS洋服裁断全書にもある。
「総丈」の指すものは資料によって違う。ここでは上着の丈(背広丈)を指している。一部の書籍(男子服裁縫の要訣、実用裁断)では、首骨の高さから床までの距離を総丈と呼び、そこから比例で背広丈やモーニング丈を出している。比例の式を持ち出すときは、その本が総丈をどう定義しているかを確かめる。
ズボン
| 寸法 | 測り方 |
|---|---|
| 腹囲(ウエスト) | 上着に同じ |
| 臀囲(ヒップ) | 上着に同じ |
| 総丈(ズボン丈) | 腰骨の上端付近から裾口まで |
| 股下 | 股下の縫い目から裾口まで |
| 裾幅 | 意匠寸法。22〜24cm程度 |
裾幅はわたり巾によって加減する。一周寸法を測って裾口の寸法とすることもある。
チョッキ
| 寸法 | 測り方 |
|---|---|
| 胸囲(ブレスト) | 上着に同じ |
| 腹囲(ウエスト) | 上着に同じ |
| 背丈 | 上着に同じ |
| 前丈(チョッキ丈) | 首の後ろの付け根から、衿沿いを通って前の腹まで |
前丈は流行により多少変わるが、ズボンの腰帯に掛かり、ワイシャツが見えない程度の丈は要る。
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参考文献
- 国内 (1925) 『TS洋服裁断全書』 大阪洋服裁断研究所 p.23 国立国会図書館デジタルコレクションで読む オンライン公開
- 国内 (1926) 『裁断研究』 日本毛織物新報社 p.8 書誌情報送信サービス
- 国内 (1934) 『実用裁断 改訂3版』 洋服工学協会 書誌情報送信サービス 昭和7 (1932)版も存在する
- 国内 (1934) 『裁断基礎研究』 松崎洋服店技術部 p.50 書誌情報送信サービス ノータックズボンの製図が欠落している
- 国内 (1934) 『短寸式裁断及補正書』 慶文社 pp.11-13 書誌情報送信サービス
- 国内 (1940) 『男子服裁縫の要訣』 文化服装学院すみれ会出版部 p.60 書誌情報送信サービス
- 国内 (1948) 『図解紳士服全書』 生活研究社 pp.47・56・102 書誌情報送信サービス