差し込み
型紙を生地に配置する工程。地の目と毛並みを合わせ、縫い代を確保したうえで、生地を無駄なく使う。ダブル幅の用尺の目安も示す。
型紙(パターン)を生地の上に配置することを差し込みという。生地を余らせないように配置できれば、必要な生地の長さが短くなり、材料費を抑えられる。
ただし差し込みは、型紙が生地に収まりさえすればよいというものではない。地の目と毛並みという2つの向きの制約があり、さらに縫い代と縫込みを織り込んでおく必要がある。これらを外すと、裁断してから取り返しがつかない。

差し込みの前に
差し込みに入る前に、生地の状態を整えておく。ウールの生地では 地伸し → 差し込み → 裁断 → 切躾 の順に進む。
地伸し(地直し)では、生地を十分に縮ませ、縦地と横地が90度に交差するように整える。これができていないと、縫製の途中で生地が縮んだり歪みが出たりして、不具合の原因になる。
綿や麻の生地では、地伸しの前に水通しが要る。
いずれも差し込みより前に済ませておく工程である。裁断してしまってからでは直せない。
地の目を合わせる
それぞれの部品には地の目(縦糸の方向)が定められている。型紙に示された地の目の方向と、生地の縦糸の方向が一致していなければならない。
毛並みのある生地
メルトンやフラノのように毛並みのある生地では、生地の長さ方向に順毛と逆毛の向きがある。上から下へブラシで撫でたときに毛羽立たない向きが順毛である。
オーバーコートなどでは通常、この順毛の向きになるように部品を配置する。そして毛並みのある生地では、すべての部品を順毛の向きに揃えることが求められる。一部だけ向きが違うと、光の当たり方が変わって色が違って見える。
一方、平織やサージの類であれば地の目の方向を合わせるだけでよく、一部の部品が上下反転していても支障はない。
この違いは差し込みの自由度に直結する。毛並みのある生地では部品を反転させて隙間に入れることができないため、平織に比べて配置の余地が狭くなる。
生地を二つ折りにして裁つ
服の部品の多くは、概ね左右対称に2つずつ取る必要がある。そこで差し込みの際は、生地を幅の方向に、中表になるように半分に折るとよい。
この状態で型紙を配置し、チョークなどで生地に形を写し取り、そのまま裁断する。利点は2つある。
- 左右対称の2枚が一度に取れる
- 印付けが裏側になるため、生地の表を汚さない
2つ取る必要のない部品、たとえば上襟は、半分に折った折山を使って左右対称になるように取る。
縫い代と縫込み
縫い代は地縫いに要る寸法である。ヤードポンド法で製図していた時代は1/4インチ(≒7mm)とされた。縫込みは、将来の直しに備えて余分に残しておく寸法で、縫うために要るものではない。
型紙の輪郭線には、縫い代を含む裁ち切り線と、含まない仕上がり線がある。仕上がり線には縫い代と縫込みを別に付ける。裁ち切り線は縫込みを付けなくても縫えるが、慣例として付ける線もある。
差し込みの際は、縫い代と縫込みを十分に織り込んでおく。とくに仕上がり線にあたる部分は注意を要する。たとえば次のような箇所である。
- 前身頃の前端
- 裾
- 後身頃の背中心線
- 衿ミツ
裁断してから縫い代が足りないと分かっても、後から足すことはできない。
用尺の目安
ジャケット、ズボン、オーバーコートに使われるウールの生地は、多くの場合ダブル幅で作られる。ダブル幅は物によって多少のばらつきがあるが、概ね 140〜150 cm 程度であることが多い。
ダブル幅の生地を使う場合の用尺は、身長165 cm でおよそ次のとおりである。
| 仕立てるもの | 用尺 |
|---|---|
| ジャケットのみ | 1.5 m |
| ズボンのみ | 1.5 m |
| 背広上下(ジャケット・ズボン) | 2.8 m |
| 三つ揃い(ジャケット・ズボン・チョッキ) | 3.2 m |
| オーバーコート | 3.0 m |
これらは余裕を見た値である。うまく差し込めばこれより短く済むこともあるが、無理な差し込みに時間を使うよりは、縫製に時間をかけることをすすめる。
ジャケットの差し込み例
ジャケット1着分の差し込みの例である。前身頃・後身頃・見返し・山袖・谷袖のほかに、上衿・雨蓋・口布・箱ポケットといった小さな部品も同じ生地から取る。大きな部品を先に置き、残った隙間へ小さな部品を入れていく。
