裁断

長ズボンの製図。前身頃と後身頃。

長ズボンの製図である。前身頃と後身頃を裁つ。裾には折り返しの分を長く取る。

長ズボン(ノータック)の製図。
長ズボン(ノータック)の製図。

仕様

ズボンの仕様には次のような項目がある。裁つ前に決めておく。

項目内容
タックの本数ノータック、ワンタック、ツータック
タックの向きインタック(内襞)、アウトタック(外襞)
前開きボタンフライ、ファスナー開き
帯別帯(腰の帯を身頃と分けて裁つ)、身頃がそのまま上端まで来るもの
ポケット通常は脇ポケットと腰ポケット
時計ポケット下前に付けることがある
裾シングル(折り返しなし)、ダブル(折り返しあり)
後尾錠後ろ中心の腰回りに付けることがある

前開きをファスナー開きとする仕立ては、戦後に入ってからのものとみられる。

時計ポケットは懐中時計を入れるもので、別帯仕立ての場合は帯の縫い目に口を作る。

水洗いでの頻繁な洗濯に耐えるよう、各所で縫込みに裁ち目を包む麻仕立てにする場合がある。

製図

前身頃

穿込(腰帯の巾)は3.5〜4cm程度で取る。上端に穿込を含める場合と、含めない場合がある。上端に穿込を含めない場合は別帯仕立てになる。

脇ポケットの位置には縫込みを多めに付けておく。口幅は6インチ(15cm)くらい、縫込みは3cm程度である。

下前は前端をわずかに削る。これをドレスカットという。穿いたときに上前側へ物が入ると、その分だけ下前の生地が押されて余る。

裾は仕上がり線で示す。裾に付ける余裕は、仕上げがシングルかダブルかで変わる。裏の余裕を7cm取るとすると、シングルなら7cmでよい。ダブル(折り返しがある場合)は、これに折り返し幅の2倍を加える。折り返し幅を4cmとすれば 7 + 4×2 = 15cm となり、図の6インチにあたる。

前身頃の製図。青が縫い代(1/4インチ)込みの線、橙が仕上がり線。破線はインタックにする場合。
前身頃の製図。青が縫い代(1/4インチ)込みの線、橙が仕上がり線。破線はインタックにする場合。

持ち出しと見返し

前身頃の前端に合わせて、持ち出しと見返しを作図する。持ち出しと見返しには別途縫い代を付ける。

持ち出しと見返しの製図。黒が前身頃、橙が持ち出し、青が見返し。
持ち出しと見返しの製図。黒が前身頃、橙が持ち出し、青が見返し。

後身頃

ダーツは1インチ程度取る。単なるV字では取らない。古い製図では1本とするものが多く、2本のものも稀に見られる。

後ポケット(ピス・ポケット)は6インチ(15cm)程度の口幅で作る。裾に付ける余裕は前身頃と同じに取る。

後刳線の上端に、尾錠で締める余裕分が付いている場合がある。

後身頃の製図。青が縫い代(1/4インチ)込みの線、橙が仕上がり線。
後身頃の製図。青が縫い代(1/4インチ)込みの線、橙が仕上がり線。

線の種類

製図の輪郭は、線の引き方で意味が分かれる。

線意味
実線仕上がり線。縫い合わせる位置で、縫い代を含まない
破線裁ち切り線。縫い代(通常は1/4インチ≒7mm)を含んだ、生地を裁つ位置

縫い代は地縫いに要る分、縫込みは将来の直しに備えた余裕である。

図に入れた縫込みの取り方は目安である。参考の図が載っている文献もあるが、必ずしも文献に基づくものではない。どの線にどれだけ取るかは慣例と好みによる。

参考文献

  1. 国内 柴田一郎 (1922) 『洋服裁縫全書ズボンの手引』 福富商店 国立国会図書館デジタルコレクションで読む オンライン公開
  2. 国内 阿部極峰 (1935) 『阿部スタンダード式ズボン類裁断全書』 メインハウス 書誌情報送信サービス ズボンについてよくまとまっているが、タックズボンの記載がない点が惜しい
  3. 国内 木村慶市, 松原正巳 (1948) 『図解紳士服全書』 生活研究社 書誌情報送信サービス
  4. 国内 松原正巳 (1948) 『テーラーズ・ハンドブック』 生活研究社 書誌情報送信サービス 婦人服の製図も含まれる
  5. 国内 染葉秋宏 (1959) 『男子服裁縫』 文化服装学院出版局 書誌情報送信サービス 折襟背広の記載がない (下巻に含まれる?)