軍服の袖や、英国式と呼ばれる袖は、袖山を低く取り、谷袖の刳りを浅くして作図する。その結果、山袖の頂から谷袖の底までの距離が、米国式の袖より1.3〜3cmほど小さくなる。

この距離が小さいぶん谷袖に布が余分に確保され、腕を上げやすくなる。腕を上げたときに袖山が邪魔になりにくい。敬礼のように腕を上げる動作の多い服で使う作りである。英国式の袖は主に詰襟服に用いる。

袖山と底の距離

文献の製図から袖山と底の距離を測ると、袖刳(基度)に対して次の値になることが多い。この値を先に決めて作図するわけではなく、出来上がった製図を測るとこうなる、という傾向である。

製図袖山と底の距離袖の形
米国式袖刳 ÷ 3袖山が高く、谷袖の刳りが深い
英国式、国民服、陸軍軍服袖刳 ÷ 3 − 1/2〜1インチ袖山が低く、谷袖の刳りが浅い
山袖と谷袖の輪郭を重ねた図。破線は袖山を下げ、谷袖の刳りを浅くしたもの。

袖付けの向きと動きやすさ

この距離が小さいということは、袖がどちらかといえば横向きに付くことを意味する。ワイシャツの袖がこれにあたる。逆に距離が大きければ、袖は下向きに付く。

下向きに付いた袖は、腕を下げているときの美観がよい。横向きに付いた袖は動きやすいが、腕を下げると袖山付近の布が足りず、袖の底の布が余ってしわが出る。動きやすさと美観はトレードオフの関係にある。

アームホール

腕の上げやすさは袖の設計だけでは決まらない。身頃のアームホールが腕の付け根に合わせて作られていることが前提になる。とくに鎌深が合っていること。付け根に密着させると窮屈になるので、沿わせる程度である。

腕の動きを重視するなら、アームホールはなるべく腕に合わせて小さく作るのがよい。大きく作ると腕を下げているときの見た目は綺麗だが、上げたときに布が足りなくなり、身頃が引っ張られて腕が上がらなくなる。

腕を下げた状態と、腕を上げて身頃が引き上げられた状態。
アームホールが大きく、鎌深が腕の付け根に対して大きい場合。腕を上げると身頃ごと引き上げられる。
腕を下げた状態と、腕を上げても身頃が吊り上がりにくい状態。
アームホールを腕に合わせて小さく取り、鎌深を合わせ、袖山を低く、谷袖の刳りを浅くした場合。腕を上げても身頃が吊り上がりにくい。

参考文献

  1. 国内 日本洋服技術家集団 (1940) 『洋服の裁断と補正』 洋装研究社 書誌情報送信サービス
  2. 国内 洋装社編輯部 (1941) 『正しき国民服の作り方』 洋装社 書誌情報送信サービス
  3. 国内 木村慶市, 松原正巳 (1948) 『図解紳士服全書』 生活研究社 書誌情報送信サービス
  4. 国内 根津鬼子郎, 松原正巳 (1949) 『裁断の基礎研究』 洋装社 書誌情報送信サービス