裁断

背広服の製図。シングルブレストとダブルブレスト。前身頃・後身頃・前見返し・上衿・山袖・谷袖。

背広服(サックコート、ラウンジジャケット)の製図である。前身頃と後身頃のほか、前見返し、上衿、山袖、谷袖を裁つ。

古い文書では、シングルブレステッドを片前、ダブルブレステッドを両前と記すことがある。

シングルブレスト

シングルブレストジャケットの製図。
シングルブレストジャケットの製図。

前端のボタンは、例外もあるが2個か3個のことが多い。2つボタンで下のボタンが外側へ寄っているものは二ツ釦一ツ掛けといい、下のボタンは掛けられない設計である(今泉末 1934, pp.54-55)。下のボタンが上のボタンの真下にあれば、どちらも掛けられる。

ラペルはノッチドラペルが多いが、ピークドラペルで仕立てることもある(木村慶市 1926, p.29)。

ダブルブレスト

前端を前中心より外へ出して深く重ねる。この重なりを打ち合いという。ボタンは前中心を挟んで2列に並ぶ。ラペルは多くの場合ピークドラペルで、ノッチドラペルは少ない。

英語では reefer と呼ぶ。

ダブルブレストジャケットの製図。
ダブルブレストジャケットの製図。

身頃の構成

現代の背広は、前身頃・細腹・後身頃の3つで半身を構成する。古い製図では前身頃と細腹が分かれておらず、2面の構成になる。前身頃と後身頃を分けない製図もある(長連光 1934, pp.66-67)。

背中心は、ベントを開けないものと、センターベントを開けるものがある。

衿

現代では、返り線で衿を折り、胸元を開いた折襟のものを背広とする。かつては詰襟(立襟)のものも背広とされた(木村慶市 1926, p.48)(根津鬼子郎, 松原正巳 1949, p.32)。

ポケット

背広では、上前に胸ポケットとして箱ポケットが1つ、前身頃の左右に腰ポケットとして玉縁ポケットが付く。腰ポケットにはフラップ(雨蓋)が付くことが多い。

スポーツジャケットなどでは、胸ポケットや腰ポケットをパッチポケット(貼り付けポケット)にすることがある。

それぞれの作りはポケットにある。

袖

山袖(外側)は谷袖(内側)より大きく取る。内側の縫い目で袖が内側へ回り込む、廻り袖の作りである。山袖と谷袖を同じ幅にする等半袖もある(今泉末 1934, pp.102-103)。

ダーツ

どちらの図も、前身頃に胸ダーツと脇ダーツが入る。胸ダーツは、明治・大正の製図では付けないものもある(畠山兼吉 1910, p.99)(太田栄太郎 1917, p.6)(木村慶市 1926, p.160)。

線の種類

製図の輪郭は、線の引き方で意味が分かれる。

線意味
実線仕上がり線。縫い合わせる位置で、縫い代を含まない
破線裁ち切り線。縫い代(通常は1/4インチ≒7mm)を含んだ、生地を裁つ位置

縫い代は地縫いに要る分、縫込みは将来の直しに備えた余裕である。

図に入れた縫込みの取り方は目安である。参考の図が載っている文献もあるが、必ずしも文献に基づくものではない。どの線にどれだけ取るかは慣例と好みによる。

ワ(輪)となる線には、図中に「ワ」と記している。生地を折り、左右を続けて裁つ。

参考文献

  1. 国内 畠山兼吉 (1910) 『実用洋服裁断法』 実用洋服裁断法発行所 p.99 国立国会図書館デジタルコレクションで読む オンライン公開
  2. 国内 太田栄太郎 (1917) 『EO式洋服裁断法』 内外織物新報社 p.6 国立国会図書館デジタルコレクションで読む オンライン公開
  3. 国内 木村慶市 (1926) 『裁断研究』 日本毛織物新報社 pp.29・48・160 書誌情報送信サービス
  4. 国内 長連光 (1934) 『実用裁断 改訂3版』 洋服工学協会 pp.66-67 書誌情報送信サービス 昭和7 (1932)版も存在する
  5. 国内 今泉末 (1934) 『裁断基礎研究』 松崎洋服店技術部 pp.54-55・102-103 書誌情報送信サービス ノータックズボンの製図が欠落している
  6. 国内 根津鬼子郎, 松原正巳 (1949) 『裁断の基礎研究』 洋装社 p.32 書誌情報送信サービス